臨床美術は、1996年、金子健二らと脳外科医、ファミリーカウンセラー、コーディネーターの協働によって、包括的な認知症治療やリハビリテーションを目的として、始められました。金子ら芸術家が、感覚を刺激し、感性を解放するアートプログラムの開発と実践を手がけ、医師が診断や効果検証し、介護家族の心理的負担軽減のためのファミリーカウンセリングも行われました。これらの多職種連携の取り組みにより、認知症状の改善、維持、日常動作行動(ADL)の向上などが認められました。
美術創作活動は、「自己実現」の具現化という人間の生きる本質的な意義として尊い意味をもたらしました。金子は、「臨床美術は、単なる治療ではなく、生きることの喜びを実感し、人生の意味を自己の中に発見するためのチャンスとして意義のあること」と語っています。
彫刻家であった金子氏は、1976年に彫刻家の共同アトリエを設立し、芸術家の地域貢献として、子どものための「小さな芸術家のアトリエ」を開講しました。
彼は「競争の美術から共生の美術」という理念のもと、感覚的に表現する具体的な表現技法や、本格的な画材から様々な表現環境まで、「本物の芸術教育」を子どもへ与えられるよう様々な工夫をこらした美術教育を実践してきました。子どもの可能性を信じ、すべての子どもの表現を認め合う共生への取り組みが、臨床美術を立ち上げる源流となりました。
この理念が臨床美術の方法論の根底にも内在化しています。
Articles
「発達支援プログラムとしての美術表現活動の確立へ向けた脳内ネットワークの解析」
保坂 遊, 杉本 英晴, 音山 若穂
臨床美術ジャーナル
2025 年14 巻1 号 p.57-64
和田 明人, 大野木 啓人, 保坂 遊, 丸本 真代
2023年 12 巻 1 号 p.3-16
―エビデンス・アプローチとナラティブ・アプローチを中心に―
保坂 遊
2023年 12 巻 1 号 p.35-40
保坂 遊
2022年 11 巻 1 号 p.31-37